qdc NEPTUNE QDC-5915を3ヶ月程度使ってみた『水色パンダさん』(49歳/男性)に実際の使用感や特徴などをインタビューしました。
qdc NEPTUNE QDC-5915
実際購入して良かった点、悪かった点など、伺っていますので、ぜひ参考にしてくださいね。
qdc(キューディーシー)NEPTUNE QDC-5915を購入しようと思ったきっかけ
まず、個人的にqdcというメーカーが好きだったということがあります。qdcのイヤホンは2つ(4SS、2SE)所有しておりますが、音質がとても私の好みに合致しており、筐体のビルドクオリティの高さも含め、私にとっては非常に信頼できるメーカーです。
そのqdcが新しいエントリー製品を出したという情報が流れてきて、写真で見たそのデザインが非常に美しかったため、試聴もせずに購入しました。
qdc NEPTUNE QDC-5915を知ったきっかけは?
ネット上で、qdcが新製品を出したことを知りました。年に数回ポータブルオーディオのイベントが開催されるのですが、そこでは色々なメーカーが新製品を発表したり、試作途中の製品を訪れたユーザーに試聴してもらったりといったことが行われています。
その場で、このNeptuneがかなり話題になっていたようでした。私があるポータブルオーディオ関係のブログで知った時点では、既にTwitterでは複数のツイートが上がっていたようで、早い人は海外から直接取り寄せている人もいました。
日本での発売は、2017年11月29日でしたが、当初は日本代理店への入荷が不安定で品切れであったため、シンガポールのショップから購入しました。現在は、在庫も安定しているようで、Amazonや家電量販店、専門店で容易に入手可能です。
イヤホンを買う際に重要視したポイントとは?
まずは音が良いということが重要ですが、さらに、その音が私個人の好みに合うかどうかという問題があります。そこはqdcなので問題ないだろうと考えていました。もちろん、私が購入できる価格であることも大事な点です。
ちなみに、qdcは中国の深センに本拠を置く新興メーカーで、Webサイトによると、10年にわたり警察や軍関係の音響機器の開発に携わっており、開発のための設備投資は非常に充実しているようです。
また、プロオーディオの世界では、中国本土で70%以上のCIEM(カスタム・イン・イヤー・モニター)のシェアを誇っているのだそうです。フラッグシップ機は軽く20万円を超える価格ですので、まさに高嶺の花です。
購入に迷ったイヤホンは?
購入に際して迷うということはありませんでした。ほとんど衝動買いに近い感じでした。
一般的に言っても、発売当初、同価格帯で、スペック等でライバルと目される製品はなかったと思います。(ライバルがいないというのは、Neptuneが特別に優れているという意味ではなく、似たようなものがなかったという意味です)
比較はしていませんが、重視したポイントとしてあげられるのは、
- qdcの製品であること
- 音質
- デザイン
- 価格
となります。
1については、私が個人的にqdcというメーカーが好きなので、購入動機としては十分でした。
2については、購入時は試聴できる状況にありませんでしたが、すでに所有しているqdcの製品の音質傾向から、おそらく問題ないと考えていました。この製品の日本での取り扱いが始まる前に、先ほど触れたイベントなどで試聴した人々の感想がツイッターやブログに上がっていましたので、そういったものは参考になりました。
3については、写真だけも十分伝わる美しさでした。エントリー機ですが、これまでこのメーカーのラインにはない新しい仕上げを施したものでした。
4については、日本での販売価格3万円という金額が高いか安いかは、人それぞれの価値観によると思います。qdcのレギュラーモデルとしては最安価の入門機です。個人的にはこの金額に見合う価値があるものと思われました。10万円を超えるような価格帯の製品であったらいかに魅力的でも、そう簡単に購入することはできません。
以下のレビューでは、手持ちのCampfire Audio ORIONと比較して書いていきます。ORIONは私が初めて購入したシングルBA機で、非常に気に入って使用しているものです。
Campfire Audioはアメリカの新興メーカーで、極めてオリジナリティの高い製品を連発して一躍人気メーカーになりました。
個人的にCampfire Audioも大好きなメーカーです。ORIONもCampfire Audioのエントリー機で、価格は4万円を少し超えるくらいです。(少し前にもう少し安いエントリー機が発売されています)
qdc NEPTUNE QDC-5915の特徴、性能
ドライバー :バランスド・アーマチュア型(BA型)
ドライバー構成 :1 ドライバー
周波数特性 :20Hz – 20kHz
入力感度 :106dB
インピーダンス :10Ω
入力端子 :3.5mm ミニ端子
付属品 :IEM Cable(リモート付き・約130cm)、イヤーチップ(シリコン)、オリジナルレザーケース、クリーニングツール、保証書(1年間)
アクリル製のクリアシェルで、IEM(イヤモニ、イン・イヤー・モニター)タイプのシングルBA機です。(2017/11/29発売)
BAドライバーを一つ積んでいるということで、EN120と同様のシンプルな構成です。
透明度の高いシェルなので中身がよく見えますが、このドライバーは、qdcが専業メーカーに特注したもので「qdc」の刻印が見られます。
以前も触れましたが、補聴器から発達したBAドライバーはダイナミックドライバーに比べて、再生帯域が広くとることが難しいという特徴があります。
その特徴(欠点)をカバーするために、低音用、高音用など担当帯域をわけて複数のドライバーを積むという形で使用することが多いのですが、一方でシングルドライバーにもシンプルゆえの良さがあり、名機と呼ばれている機種もあります。
入力感度106dB、インピーダンス10Ωと比較的鳴らしやすく、スマートフォン直差しでも使いやすい仕様となっています。そのためか、ケーブルもリモコン付きとなっています。音質を最優先するモデルであれば、一般的にリモコンなどという余計なものはつかないのが普通ですが、このモデルは入門機としてもっとカジュアルな使い方を想定しているようです。
アクリルシェルの形状は、上位機種と同様CIAM風の耳孔にフィットするタイプです。フェイスプレートには鉱物であるマイカを採用し、シェル本体はクリアブルーです。
登場当時この仕上げとカラーの美しさが話題になっていました。
このようなフェイスプレートの装飾については、カスタム・イン・イヤー・モニターの世界ではさまざまな意匠や素材が選択できたり、オリジナルのロゴを入れたりと、美しく華やかなオリジナルデザインをオーダーすることができますが、普通のイヤホンではあまり一般的ではありません。
qdc NEPTUNE QDC-5915のメリット
購入後数ヶ月たちますが、とても綺麗なので傷が付くのが怖くて普段はあまり使っていません。
まず外観ですが、上位機種の2SEや3SHなどもそうなのですが、アクリルシェルの透明度が非常に高いです。フェイスプレートはマイカにより金属的なきらめきが付加されて装飾品のような感じです。
フェイスプレートとシェルのつなぎ目も滑らかに処理されて、文句のつけようがないビルドクオリティです。個人的に、このシェルの青は明るいけれども深みのある美しい色だと思います。
形状はシングルBAということで、小ぶりなIEMタイプで私の耳孔へのフィット感は非常に良いものでした。小ぶりであるがゆえか、遮音性はシェル形状よりもイヤーピース次第という感じがします。
私は、イヤーピースはfinal Eタイプを使用しました。
付属のケーブルは、細目でしなやかで扱いやすいものです。プラグ部分の金物なども汎用品ではなくメーカーロゴの入ったオリジナルで、高級感があります。
リモンコン付きで音質よりも使い勝手を優先した印象を受けますが、入門機としての位置付けからこのようなケーブルになったのでしょう。
ちなみに、Campfire Audio ORIONは、有機的な形状のIEMタイプとは対照的なアルミの筐体をビス留めしたメカメカしい外観で、個人的にはこちらも非常にユニークでかっこいいと思っています。
私の機種は限定色のsky blueですが、標準機は黒です。現行機は塗装の仕様が変わってORION CKという名称になっていますが、音質などはほとんど変わっていないと思われます。この独特の形状から人によっては角が耳に当たって痛いというケースもあるようです。
私は問題なく装着できますし、遮音性も十分です。こちらのイヤーピースは、JVCのスパイラルドットを使用しています。
音質についてですが、これはあくまでも個人的な見解ですが、ORIONはシングルBA機の中でも名機と言っていいと思っています。ORIONはメーカーによって”Less is More”というキャッチコピーを与えられていますが、これは近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの言葉で、「より少ない要素で、より豊かに」というモダニズムの美学を表明したものです。
ORIONはまさにシングルBAという最小限の構成で、豊かな音楽体験をもたらすものと言えると思います。
特に、中高音の一切の曇り・くすみを感じさせない透明感が素晴らしく、女性ボーカルを聴くならこれ、と(個人的には)断言できます。低域はタイトですがしっかり出ていると感じます。解像度もかなり高いと思います。
このように中高音に寄せたORIONに対して、Neptuneは、フラット傾向で低音から高音までバランスよく再生する印象です。シングルBAということで、どうしても上下の伸びには限度があり、低音や高音は必要十分という感じで、強い個性は感じられません。
ORIONより明らかに低音は強く出ており、響も豊かです。一方、高音のキラキラした感じは控えめです。 ORIONがクールな寒色系の音色だとすると、Neptuneにはあまり音色の傾向を感じません。大編成のオーケストラなどを聴くと、個々の音が分離しきれておらず塊で聞こえる感じが少しあります。(情報量においてドライバーを多数積んだ機種に及ばないのは致し方ないところだと思います)
一方、音が横方向へ伸びやかに広がっていく感じがあり、個々の楽器の音色はとてもリアルに感じます。シンプルな構成の楽曲(アコースティック楽器と女性ボーカルなど)では、とても音楽的な表現をしてくれると感じます。このあたりの説明は難しいのですが、圧倒的な情報量や刺激的なワイドレンジなどの特徴がなくてもとても音楽的で、丁寧な音作りだと感じます。
qdc NEPTUNE QDC-5915のデメリット
デメリットと感じるところはあまりありません。
音質的な面では上述したように、フラット傾向で、わかりやすい個性がないとも言えるかもしれません。しかし私にとっては、これはこれで十分使い分けて楽しめるものです。私の好みは中高音寄りなのですが、Neptuneの音質はより一般的な受けの良さを持っているのではないでしょうか。
ケーブルに関しては、私はリモコンは不要なので、利便性よりも高音質なものが標準で付属していればよかったかなとは思います。逆にいうとリケーブルによる伸び代があると考えることもできます。
qdc NEPTUNE QDC-5915の総合評価
ORIONとの比較では、両者の違いがはっきりしていて、使い分けができると感じました。
個人的には聴き疲れせずリラックスして音楽を楽しめるイヤホンとしてとても気に入っています。見た目の美しさも、気分が上がりますね。個人的にはORIONが大好きなのですが、Neptuneもアコースティックな楽器音やボーカルが生々しく、音楽性に優れたイヤホンだと思います。
どちらかというと、外部騒音環境下で聴くよりも、静かな室内で丁寧に聴きたい音だと感じます。
一般的には、シングルBAの歴史的名機としてまず一番に名が挙がるのは、ETYMOTIC RESEARCH(米国)のシリーズだと思います。
メーカーが世界で最も正確なモニターイヤホンを標榜するだけのことはあると思います。個人的には、エティモの象徴であるトリプルフランジイヤーピース(三段きのこ)がどうしてもうまく装着できず、購入には至っていませんが、試聴するとこれはこれでとても良さそうなので、いつかは手に入れたいと思っています。そのほかにも、final(日本)もシングルBAの名機と言えるものを輩出しています。
シングルBA機には複数ドライバー機やハイブリッド機にはない、魅力があるように感じます。また、シンプルであるにもかかわらず、メーカー・ブランドによってさまざまなサウンドになるのが不思議で面白いところです。
qdc NEPTUNE QDC-5915
qdc NEPTUNE QDC-5915の口コミ・評判は?
qdc NEPTUNE QDC-5915のネットでの評判を調べてみました。以下、良い口コミ、悪い・要望などの口コミをどうぞ。
良い感想や効果があった口コミ
- 見た目、性能ともに最高。低温控えめで優しくいい音を鳴らしてくれます。バランスで聴くneptuneは優しかった音が少し元気になり、ボーカルがハッキリします。どのジャンルでもソツなく聴けます。イヤホンに10万出せない、3万円の予算なら買いです。
- IEMメーカーなので装着感がとてもいい。shureのSE315をはるかにしのぎます。細やかな音で高音から低音までバランスが良い。
- 女性ボーカルにとても相性がいいです。低音に賛否があるが、私は締まった音で聴いていて気持ちいいです。
悪い感想や要望などの口コミ
- 属のケーブルの質感が多少絡みやすい。
- シングルBAの製品としては、そこまでコスパは良くない。最近値が下がってきたFinalのheavenVIと比べると、多少劣るかなと。マルチBAの高級機に比べると広い再生帯域とは言い難い。
- 迫力やメリハリの効いたサウンドが好みの方は物足りないさを感じるかもしれません。
Twitterの評判
qdcのNEPTUNEは本当に最高の装着感!軽いし!
もしも今使っているのが壊れたらもう一度買う自信があるレベル。
この機種で初めてのバランス接続を体験。私の耳では音の歯切れが良くなったのくらいしか分からなかったけど??— かにかま@趣味垢 (@skm_memo) 2018年10月7日
あと一ヶ月くらい前に購入したqdc neptune も貼っとく。青がすばら!! pic.twitter.com/VqjCMvMx6h
— 海老くん@貯金したいマン断捨離 (@Ab_ebikun) 2018年9月30日
初めての1BA決めた
qdc neptune + Fiio E12#eイヤ愛写 pic.twitter.com/fz8wkDDPVr— mmmmmmmmmm (@mmmmmmm92760610) 2018年10月1日
イヤホンと酒。 #qdc #neptune #ZX300 pic.twitter.com/p2UwSNZ2jG
— ??.-.HaaaRa=3=3=3 (@HERracing) 2018年10月2日
インスタの評判
このイヤホンに出会えたから当分の間は欲しい欲しい病もおさまるかな。
qdc NEPTUNE QDC-5915の購入を考えている人へアドバイス
ドライバー数が多くなるほど、イヤホンの価格も上がっていきます。これは物量が増えるので当然ですが、価格が高いものが常に良いものとも限らないのも事実です。
機構が複雑になればメリットだけでなくデメリットも出てくるわけで、そこをどう対処するか工夫が必要になります。 逆にシンプルであることが、音質的にメリットに働くこともあります。怒涛の情報量や刺激的な音に真剣に向き合っていると、聴き疲れてしまうこともあります。良い悪いとはまた違った価値観で、使い分けることが可能です。
スピーカーの自作で、フルレンジのユニット一本で、あとはボックスの構造によるアコースティックな工夫で音質を作り込んでいくのが醍醐味であるというのと似ているように思います。
現在3万円前後という中堅機の価格帯では、このような新しいシングルBA機を始め、final E5000のようなシンプルなダイナミックドライバー機も出てきており、色々と楽しめるジャンルを形成しつつあると思います。
あまりスペックにとらわれず、それぞれの特徴を個性として楽しんでみるのも良いのではないかと思います。 こちらのレビューの内容もあくまでも私個人の感じ方によるものであり、人それぞれ感じ方も違えば、好きな音も違うので、環境が許せば試聴されることをお勧めいたします。
ちなみに、中華イヤホンの世界では、qdcのデザインを模倣したようなものも出てきています。中国メーカー同士でこのような現象が起きるほど、中国製品の技術は向上しているし、市場も成長しているのを感じます。
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